森の落としもの 

とっくに暖かくなってきてもいい頃なのに
雪がしんしんと降りつづけていて
動物たちも巣のなかからでてきません。


ウナは冬の間に雪のなかの落としものを拾って
お店屋さんをはじめることにしました。

めったにお客さんはきませんが、
それでも片手の手袋やコートのボタンなどを
落とした動物たちがお店にくることもあります。

長い冬がまだまだ続きそうな夜に、きゅっきゅっとあわてた
「けむくじゃら」がウナのお店に入ってきました。

「けむくじゃら」はちいさな手をせわしくなく動かしてなにかを訴えています。

ウナは天上からぶらさがっているカギをひとつ掴むと「どうぞ」とわたしました。
「けむくじゃら」はカギをすこしみてポイと投げてしまいました。

ウナは目をぱちぱちさせながら慎重にもうひとつのカギをとり
「どうぞ」とわたしました。

「けむくじゃら」はカギの輪の部分に毛を押し付けたりからめたりしていましたが
満足したのかお店からでていきました。

その晩。

ウナは「けむくじゃら」がいろいろな場所のカギをあけていく夢をみました。

雪の奥深くの草はらのカギをあけて
凍った小川のカギをあけて
冷たい雲のカギをあけて
動物たちの巣のカギもあける夢です。

朝、ウナが目が覚ますとお店の前には動物たちが集まっていました。
お日様の暖かい光が差し込んでいて、雪の間から緑色の草が光っています。

ウナが渡したカギは春の扉をあけるカギだったのかもしれませんね。

森の落しもの」
2015年4月
集めたもの4:
くるみ割り人形
紙に包んであった
集めたもの1:
カギ
いろんな所のカギ
集めたもの5:
カメラ
レンズが割れている
集めたもの2:
クリスマスのおもちゃ
壊れている
集めたもの6:
花とフォーク
森で拾う
集めたもの3:
そろっていないボタン
木の入れ物にいれてある
集めたもの7:

少しぐらぐらするが
高いところに手が届く

春の使者
ウナがけむくじゃらと呼ぶ

集めたもの8:
ピアス
人間用なので大きい

 

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